介護の現場で、特に夜勤帯のことだったりするけど…
私が勤めている施設では、2時間おきに見回りをしている。
施設内は、真夜中でも明るい。
真っ暗ということはなく、回廊になっている廊下にはスポットライトがついている。
そして、監視カメラが廊下には設置されている。
廊下に監視カメラがる施設、今は、当たり前なんだろうね。
監視カメラを観察しながらモニターの前で夜勤ができるわけもなく、すぐに動ける体制を整えて、記録をポチポチ入れながら、の夜勤。
事務所の片隅に座って仕事をする。
ペタペタと、遠くの方から足音が聞こえてくる。
ペタっと少し大きな音の後に小さくペタ。
このリズムで歩いてくるのは、Kさん。
細身の歩ける利用者様。
ペタッ、ペタ。
ペタッペタ。
ちょっと左に傾くように歩いてくる。
只今、夜の11時ころ。
事務所は玄関の脇にある。
私の職場は、ホスピスということもあり、夜勤は看護師さんがいる。
介護士にとって、こんなに心強いことはない。
夜勤帯、何があるかわからないから。
事故、怪我、急変等々…
看護師は、神様に見える。
足音の話に戻るけど、廊下の奥にKさんが歩いてくるのがみえた。
事務所入り口のカウンターのところまでくると、カウンターに両手をドンっとついて、身を乗り出すように顔を突き出す。
背が高いから、カウンターの天井に頭がぶつかりそうだ。
そして、にこやかな笑顔で一言。
「冷蔵庫で冷やしてあるビールください。」
毎度のこと。
そして、
「ごめんね、今日は売り切れだから。また、明日ね。」
と、答える私。
(えっ、ないの…。)と、心の声が聞こえてきそう。
眉毛を8時20分にして、しょぼんとされる。
その様子が、ちょっとかわいらしく見えてクスッと笑える。
「もう、遅い時間だから寝ようね。」と、居室へ誘導。
ベッドに入ってもらい、布団をかけて「Kさん、おやすみなさい。」と声をかけて、電気を消して退室する。
これね、10分おきの一連の流れ。
私の頭の中では、ドリフのコントを思い出す。
志村けんがいかりや長介にばれないように、寝ている布団に戻るシーン。
わたしは、おかしくなってついつい笑ってしまう。
忙しくない時は、このやり取りも楽しいんだけね。
認知症。
Kさん、本当に忘れちゃっているのかなぁと思うこともある。
疑い、疑惑。
だって、ニヤッと一瞬だけ笑うことがあるもの。
ある時、私はKさんに聞いてみた。
「ねぇ、本当はわかってるでしょ?」
「ビール、何回ももらいに来たら、一回くらいはいけるかもって。」
と聞くと、ニヤァと広角をあげて笑う。
そして、「ばれた?」と小さく言う。
(このじじい、タヌキだな。)と、私の中で確信に変わる。
それでも、取りつかれたようにカウンターに来る姿に私個人としてはね、
好きなだけ飲ませあげればいいじゃん!って思ってる。
だって、ノンアルコールなんだもん。何なら、炭酸水の時もあるしね。
と…心の中でつぶやく私。
現実はね、「また、きたの?何回きても同じだから。ありません!!早く寝てください!」と、
眉毛を10時10分に釣り上げて、目を三角にして、荒っぽい口調の職員ばかり…
怒っても解決しないし、余計疲れるからさーと
Kさんと一緒にニヤニヤしている私。
職員の厳しいまなざしに、
やめろ!ヘラヘラしてるな!と心の声が聞こえてくる。
私は、入居者様も一緒に働く職員もみんなが気持ちよく過ごせる空間づくりを、目指しているだけ。
なんだけどね。
そして今日も、「Kさん、寝ようね。」と部屋に送っていく。


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