楽しいお風呂

介護

出勤して、今日の自分の役割を見る。

入浴介助。

あら。

すっかり、忘れていた。

エプロン付けて長靴履いて。

これがね。

でっかいの。

私の足。

22㎝。

会社の長靴。

26㎝。

ブカブカです。

エプロンもでかい。

腰で結んでいる紐がちょっとでもほどけたら…

「殿中でござる、殿中でござる…」

松の廊下。

忠臣蔵のようだ。

で、私の場合は。

自分で、自分のエプロン踏んで転びそうになる。

会社にあるものは色々、でかい。

手に付けるビニールの手袋もそう。

Sサイズだけど、ブカブカ。

私が、標準サイズでないからだ。

準備ができて、入浴のばあちゃんを呼びに行く。

コンコン。

部屋をノックして、

「ニューヨークへ。行きたいかー?」

と、声をかけるけど…。

乗ってこない。

というか、聞こえていない。

夢中で折り紙の鶴を折ってる。

ベッドの上には、鶴がいっぱい。

どこで寝たのかな?

と。

思うくらいに。

そおっと近づくと、びっくりさせてしまうから。

大きく、変な動きで近づいて行く。

ばあちゃんやっと気づいてくれて、

「風呂か。」

と。

押し車押して、一緒にお風呂場でへ向かう。

ばあちゃん。

いっつもブレーキをかけてない。

急に立ち上がって、押し車をつかんだら前に転んでしまうのでは。

と、心配になる。

なので、ブレーキをかけて押し車を持ってもらう。

ばあちゃん。

「あれま、動かないね。」

と。

「ブレーキかけたから、外してね。」

と、私がいうけど、聞こえてない。

もう一度、大きな声で

「ブレーキ、かけたからね。」

と、言うと

「あははは。」

と、ブレーキを外す。

今、笑うとこなのか?

ばあちゃんの笑い声は、笑い袋のよう。

面白いけど、耳に残る。

やっと、風呂に出発。

脱衣場に着くと、男らしくとっとと脱いでる。

浴室に、手を引きながら連れて行く。

椅子や床を温めて座ってもらう。

私の段取りが悪いのと、ばあちゃんが早いので色々間違いが起きる。

「頭、洗いますねー」

と声をかけて洗い始める。

シャワーで洗い流そうとしたら、

「えっ?」

ばあちゃん、頭に付いてる泡をとって顔を洗い始めた。

びっくりして、慌てて頭の泡を洗い流すわたし。

あっ。

頭をふくタオルは脱衣所だ。

「ちょっと、持っててね。」

と、シャワーを持ってもらう。

ばあちゃん。

私の顔をじっと見ていた。

タオル持ってきて、頭をふく。

あかすりは、棚の上。

ちびの私にはちょっと届かない。

また、シャワーを持ってもらった。

ばあちゃん。

耳が遠いから。

両手にしっかり、シャワーを持ってもらう。

今度は、大きな声で

「えっ?」

っとばあちゃん。

びっくりして、私をじっと見ていた。

だってさ。

シャワー止めたら、寒いでしょ。

と。

あかすりタオルを取って、シャワーと交換してもらった。

ばあちゃんの一つ一つの動きがかわいい。

つぶらな瞳でじっと見て。

びっくりして。

身体もすっかり、洗い終わって泡もきれいに流し終わり。

湯舟へ、ゴー。

ザッバーンとお湯があふれる。

「ちっと、ぬるいな…。」

と。

ボソッとつぶやくばあちゃん。

「ごめんね。ぬるかった?熱いのたすね。」

と、声をかけてお湯を出す。

温度の加減を見ながら。

ばあちゃんの様子を見ながら。

蛇口のお湯を止める。

肩にタオルをかけて、身体が冷えないようにタオルの上から桶でお湯をかける。

「もういいよ。でる。」

私が、怖いのはここから脱衣所への移動。

手引きで連れていくけど、そもそも力がないから。

何かあった時は対処できない。

だから、いつもは道具を使う。

車椅子。

あれほど、心強い道具はない。

安全確保はできるもの。

ばあちゃんの場合は、押し車だから。

手引きで、脱衣所へ移動する。

身体拭いて、リハビリパンツを履いてもらおうとしたら…

あっ。間違えた。

パットを二枚持ってきちゃった。

ばあちゃんもそれに気がついて、

「間違えたん?」

「うん。」

「あははは。」

また、笑い袋の声がした。

私は、必殺、誰でも使っていいパンツ。

を、持ってきて履いてもらった。

ばあちゃん。

Mサイズなのに。

LLしかなくて。

…でかい。

仕方ないから、お部屋に戻った時に取り換えよう。

段取り悪くて、ごめんなさい。

無事に、お風呂が終わり…

やれやれと。

肩の力が抜けたら…睡魔が襲ってくる。

お風呂介助の終わった後は、睡魔との戦いです。

しかも…毎回。

わたしだけなのかな?

そして、別の日。

また、お風呂の介助。

ばあちゃんの部屋にお迎え行って。

今日は、間違えないように、リハビリパンツとパットを持つ。

(よしっ!)と心。

折り紙の鶴。

めっちゃ、増えてますけど…。

スーパーの袋に大量に入ってる。

この方。

確か、100歳近いはず。

他の方は、大抵寝てる…。

時間の過ごし方を無駄にしてない。

鶴はね。

職場に飾りたいんだって。

うちの施設。

ホスピスだから…。

みんなの病気がよくなりますように…。

って。

自分だって、がんなのに。

だけどね。

この方、すごいの!

その、がん。

良くなってきてるから!!

そして、完治したり。

かなり回復すると…。

うちの施設からは、卒業。

以前も、そういう方がいらした。

さみしいけど、嬉しいです。

ばあちゃんを、お風呂へ案内して…。

前回の失敗をしないように、準備万端。

シャンプーしながら、またシャンプーで顔洗わないように。

洗顔フォームを手にのせてあげた。

そしたらね…。

えっ?

洗顔フォームで、頭を洗い出した。

いやいや…。

今、頭を洗い終わってきれいに泡を落としたところ。

あははは…。

苦笑いしながら、もう一度頭を洗う。

ばあちゃんがザッ、バーンと。

湯船に入ると、身体がみるみる赤くなる。

お湯の温度。

40℃位。

さっき、ちゃんと計った。

入る前にね。

あら。

身体が冷えてたかな?

ばあちゃん。

バニラアイスが大好きで、よく食べる。

「何個、食べたん?」

と聞けば、

「今日はね、2個!美味しかったー。あははは。」

と。

「それもね、夜中に食べたんだよ。」

「美味しいよねー。」

と、嬉しそうに話す。

かわいい。

夜中に食べたんですか!

と、

声を荒げる職員もいるけど…。

別に、いつだっていいじゃん。

食べたいとき食べれば。

と、

私は、思う。

私もそうだし。

家にいれば、そんな感じ。

それって、

何物にも捉われない。

自由。

常識とか、関係ない。

世間の決めたルールで生きない。

自分のルールで生きる。

たまに、というか。

うるさい職員は、自分の型に枠に…。

ばあちゃんの生き方をはめたがる。

お前とは違うから。

一緒にするな。

と、言ってもわからないのもわかっているから。

ばあちゃんが攻撃されないように守る。

それだけ。

本当の優しさとは何か?

生きる人を支える仕事とは?

きっと、そいつと私では意味が違う。

私が思う優しさは、自由を奪わない。

私の仕事は、その人のできることを奪わないことなのだ。

うるさい職員も私もばあちゃんも。

みんな、違う人間。

同じではない。

そこを認める。

尊重する。

自分の型にはめれば、管理は楽だ。

しかし、それは…なんか違う。

自由ではない。

私にそんなことしたら、抜け道しか見つけない。

全く違うやり方、発想でやり抜く。

職場で異色なのは、わかってる。

だけど、誰よりもみんなから好かれていることを職員は知ってる。

出勤すれば、一発ギャグ。

朝から、しらーっとした空気が流れる。

これでよし!

滑ってなんぼ。

これで、時間がずれる。

ずれると、悪い空気の流れが変わる。

計算してやっていたわけではない。

段々、わかってきたのだ。

私が、得意なのは場の空気を変えること。

今は、浄化できる人を目指している。

だから、お笑い芸人目指してる。

私にとって、お笑いは浄化なのだ。

いつ、亡くなるかわからない方々。

その方たちの心が笑ってスッキリして、

軽やかになって。

魂が喜んでくれたら、嬉しい。

それだけなんだ。

ばあちゃんの折り鶴と、

形は違うけど同じ。

だから、私ね。

ばあちゃん、大好きです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました