会いたい人

介護

「別れた、女房に会いたい。子供に会いたい。」

寂しそうに、話をする。

いつ別れたのか聞けば、20年以上前のことだそう。

背の高い、カラオケがとても上手な人。

カラオケが始まると、その人の歌を聞きたくて、女性入居者様がホールにやって来る。

それも、ぞろぞろと。

(すごいな。)と、見てる私。

まだ、60代と若い、男性入居者様。

ある時、「若い頃は何をされていましたか?」と聞くと、

「ケンカに明け暮れていた。」と。

(そうなんだ。怖いんですが…。)

仕事の話は、出てこないから…定職についていたわけではなかったのかな?

認知症が少しある。

同じ話を何度もしてしまう。

でも、

時々ふっと、ホントの自分に戻られる。

その時、昔の記憶がよみがえる。

奥様と子供たちと過ごされていた時に戻りたい。

その方の中では、一番キラキラした思い出なのだろう。

離婚され、一人になり、そして生活保護。

とはいえ、

自由はないけど、身体の安全は守られている環境。

その方にとっては、とても窮屈なものなんだと。

(健康って、ありがたいな。)と私は思う。

健康だから働けるしね。

働くから、お金を稼ぐことができる。

その方。

ある時、「おれは、背が高いだろう。だから、小さい人が、好みなんだ。」と。

しかも、入浴介助のタイミング。

なぜ今?

となりで聞いてる男性職員は、苦笑い。

私は、何とかしてと目で訴えるが、笑っているだけ。

ぞわっー。(必要以上にそばに行くのをやめよう…。)と誓った。

私は、ちびです。

で、

同じくらいちびの同僚がいる。

彼女と私は、ヘアスタイルがほとんど同じ。

その入居者様。

同僚の肩に手をついて「疲れたよ。」と言ったそう。

同僚「やめて、触らないで!」と、激おこ。

そう。

彼女は、強い。

長い物には巻かれてしまうけどね。

彼女が怒り、入居者様。

しょんぼり。

そこに、自称かわいい。

でも、本当はもてない30代職員。

スタイルだっていいし、別に不細工ってわけでもなく。

何で、もてない?

なんだろうね。

色気を感じない。

お化粧して、きれいにしてる。

頑張っているのは伝わる。

でも、なんだよね。

わかった。

彼女の歩き方だ。

少し、前のめりに左に傾いて歩く。

(あぁ、腰が痛いんだな。)

でも、ずいぶんと歪んでいる。

歩く姿勢、大事だな。

と、思う。

ひょこひょこ歩いているように見える。

なんだろうね。

そうだ!

カマキリだ!

歩き方が、そうなのだ。

獲物(男)を狙う、ハンター。

その入居者様へ。

「大丈夫?」と声をかけても、

(お前には、言われたくない。)といった感じ。

その職員が、武勇伝を語るように話す。

男性入居者様から「私、色々相談されたり、言われるんだよね。さみしいから、そばにいてくれって。」と。

笑いながら「そんなの無理に決まってるじゃん。できるわけないよねー。」

でも、その入居者様がくると「大丈夫?」と30代職員(カマキリ子)は声をかけてる。

できないことが分かっているなら、違う声のかけ方があるはずだと思う。

介護とは?

私のやり方。

間違ってるのかな?

私は、本当に必要な時に手をかす。

それ以外は、その人の持っている力を信じて、不要なことはしない。

難しい。

介護と過介護。

本人の意思を尊重する。

でも、私も同じ人間。

だから、それ以上は踏み込まない。

自身のパーソナルスペースは確保している。

そこがなくなるときは、本当に「いま」この瞬間を感じた時だ。

助けないといけないとき。

文句言って、怒っているくらいの人の方がいい。

しょぼんとしてたら、どんどん落ちてしまう。

場の空気を明るく、明るく、するようにいつも心掛けてる。

入居者様が笑ってくれるようなことが出来たらと思ってる。

また、カラオケかなぁ。

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