食べたいもの

不思議

私の父は、震災のあったとしの1月に亡くなった。

その年のお正月に、実家へ行くと…真っ白な顔の父。

お父さんって、色黒だったよね?

でも、真っ白。

色が抜けてる。

漂白されてる感じだった。

しかし、声は大きい。

相変わらず大きな声で、

「ばかもん!」と、

怒鳴っていた。

あんだけ大きな声が出るんだから、大丈夫じゃないの?

と。

私だけではない。

その時いた誰もが思っていたと思う。

しかし、15日のお昼前に体調を崩して救急車で運ばれた。

当時の私は、納棺師(おくりびと)。

その日、

お昼過ぎより、電話がやたらなっていた。

でもね。

納棺式は今日だけ。

別の日にはできないから。

どんなことがあってもやり遂げる。

そして、

私がやっと電話に出ると、叔母から早く来い!と怒鳴られた。

父、危篤と。

まだ、仕事は残っている。

後一人。

納棺終わったら。

最後まで終わったら帰る。

と、決めていた。

当時、70代の父。

最後の納棺の方も70代だった。

私は、泣きながらお式をしたのを覚えている。

でもね。

その方のご家族にしたら、大事な方。

だから、仕事はきっちりやり遂げた。

会社に戻り、社長に全部話した。

社長は、

「早く帰りなさい」

と、

言ってくれた。

家に帰り息子たちを車に乗せて、実家へ出発。

子供たちは、

「お着替えは?お泊りなの?」

と、ルンルンしてる。

いや、

「じいちゃん死にそうだから。早く車に乗って!」

と、私は怒っていたと思う。

実家は、車で1時間くらい。

峠道を越えていく。

峠の半分くらいまで来た時に、

父からの声が聞こえてきた。

「俺は、行くけど後のことはよろしくな。」

と。

それでも私は、

「今行くから。待っててね。」

と、空に向かって叫んでいた。

父が何か一生懸命言っているのが聞こえているが、

内容はわからない。

聞いてない。

事故しないように、病院へ向かうのに夢中。

病院へ着くと、伯母が入り口で待っていた。

子供たちと父に話しかけると…ホッとしたような表情で、息をひとった。

私が、父にかけた言葉。

「心配するな。あとのことは任せてね。」

私は、自身の納棺道具を持っていた。

最後の化粧は、私がする。

と、

決めていたから。

病院の看護師を説得して、させてもらった。

そして。

お葬式が終わった翌日のこと。

夢の中で、父が帰ってきた。

「俺だい。俺だい!」

と言いながら、玄関から入ってきた。

昔の家。

私が、小さい頃の家だった。

そう。

赤ではなく、緑色のコンビニ服を着ていた。

今思えばだけど、

今は、みどり色の制服になってる。

そういえば、そうだ。

夢を見たときは、違和感があったけどね。

あれから…1年がすぎた。

父が夢の中で言う。

「親子丼が食べたい。」

と。

私は、父の命日に親子丼を買って仏壇へ備えた。

母が怪訝そうな顔で私を見てる。

「お父さんが、食べたいっていうから。」

「お父さんのコンビニで買ってきたよ。」

というと、教えてくれた。

あの日。

亡くなる日の朝。

「今日のお昼は、親子丼が食べたい。」

と。

母に言っていたそうだ。

結局、親子丼を食べ損ねてしまったから。

食べたかったのだろう。

こういう事。

時々ある。

「ピザが食べたい。」

と言って、買ってきたことも。

まあね。

喜んでくれればそれでいいしね。

あれは、夢のなかだったけど…。

仏壇から、直接きこえたこともあった。

このお話は、また今度ね。

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