神風特攻隊

エステティシャン

サイレンが大きくなる中。

敬礼をした若者が、飛行機に乗り込み飛び立っていく。

それも、次々に。

私は、深い悲しみの中にいた。

今から、20年位前のこと。

生まれて初めて飛行機に乗る。

福岡空港に着いたときから、市内のホテルに向かうまで。

福岡の街並は、近代的。

大抵どこの町でも古き良き時代の建造物があったりする。

空港に着いたのは夜。

夕闇の中を、ネオンきらめく街を走りホテルへ着いた。

だから、私が歴史的な建造物を見落としたかもしれない。

しかし、私には余りにもきれいすぎる街に…

違和感があった。

私が泊まったのは、

ビジネスホテル。

初めての飛行機に興奮冷めやらぬ状態だった。

だってね。

地面に足がついていないなんて!!

あんな鉄の塊が飛ぶなんて…怖い。

それでも、旅の疲れからすぐに寝てしまった。

しかし、一晩中サイレンの音。

空港が近いって、こんな音がするんだと思っていた。

私は、夢の中にいた。

白黒の映画のよう。

そこは飛行場。

若い兵隊さんが並んでいる。

そして、自分の番になると敬礼をして飛行機に乗り込んでいく。

そして、並んでいる若者は次々に。

まだ、幼い顔立ちの男の子。

18歳くらいかな?

サイレンの音はずっとなっていた。

朝。

一晩中だったから、寝ていたのか?寝ていないのか?

わからない。

朝食を食べに行くと職場の同僚が待っていた。

私は、福岡へ仕事の研修で同僚と来ていた。

私は、同僚に

「一晩中サイレンの音がしてうるさかったね。」

というと、何の事?

みたいな顔をしている。

「静かだったから、よく眠れたよ。」

と言う。

私だけ?

そうかと、それ以上同僚には言わなかった。

でも、ずっと考えてた。

そして、

あれは…特攻隊だと。

彼らは、片道だけの燃料を飛行機に積んで乗っていく。

正確には、そういう教育をされて、洗脳されて。

乗っていく。

お国のために。

そんな映像が頭の中に入ってきた。

私には、子供がいるからわかる。

「逃げて帰っておいで。」

自分のかわいい子を死なせるために生んだのではない。

育ててきたのではない。

どんなことがあっても生きていて欲しい。

幸せになってほしい。

それが、親の願いだから。

私だけではない。

いつの時代も、母親とはそういうものだと思うから。

私は、出陣していった若者たち。

見送ってきた、仲間たち。

若者を送り出した家族たち。

彼らの思いを思うと…胸が張り裂けそうになる。

普通ではいられない。

正気ではいられない…と思った。

私は、仕事を終えて再び福岡の空港へ向かった。

福岡の街並みの違和感は、空襲で壊滅したからだと。

だから、すっかり丸ごときれいなのだ。

私の剣道の先生。

小学生の頃だけど、

特攻隊の生き残り。

何かあると、

「俺も仲間たちと死にたかった」

「生き恥をさらすのは嫌だ」

と、よく泣いていた。

私は、お前は生きているんだろう!

しっかりしろ!

彼らの分まで生きて生きて生きまくって、

幸せにならないとダメなんだよ!

何、言ってんだ!

と、先生に今なら言いたい。

みんな、死にたかったわけなんかじゃない。

青春時代。

これからっていうときに…

そうするしかなかったんだ。

と。

私は思う。

私は、心の中で手を合わせて帰ってきた。

戦争。

私は、嫌いです。

私の泊まったホテル。

近くには有名な豚骨ラーメンのお店がありました。

赤い看板。

よく光っていました。

忘れられない、福岡の夜です。

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