まだ、見習い中だった頃のこと。
納棺師の見習い。
先輩納棺師と一緒に納棺先の家に向かった。
先輩の車に乗って。
真夏の暑い盛りなのに…車のエアコン壊れている。
「ごめんね、エアコン壊れちゃって熱いよね。」というが、
「はい。」とは言えない私。
車に同乗させてもらい、運転までしてもらっているからだ。
8月の暑い日。
なぜか、汗が出ない。
それどころか、生あくびばかり出る。
先輩の前で生あくびをしている自分が嫌になった。
失礼だと思ったからだ。
でも、生あくびは止まらない。
コンビニ休憩してもらったらトイレで吐いてしまった。
何か、変なもの食べたかな?と思っていたが、後でわかったこと。
熱中症になっていた。
帰宅してから、熱があり翌日は点滴を受けてきた。
そんな状態だったが、納棺はしっかりやってきた。
私は、まだ見習いだったから「ご尊体」へメイクをさせてもらった。
亡くなった方を、ごそんたいという。
とうといからだと書く。
私は、めちゃくちゃ気持ち悪くなっていたが、気合で乗り越えた。
納棺は、大切な式。
やり直しはできないから。
この部屋は、仏間。
仏壇があり、目の前にご尊体がいらっしゃる。
で、私の後ろにはタンス。
仏壇から声が聞こえてきたことはあるけど、今日は聞こえない。
お化粧を始めると、後ろから熱い視線を感じる。
何をしているのか?じっと見られている感じ。
お化粧終わって、先輩と交代。
私は、準備だけ。
後ろに下がって、チラリとタンスを見る。
タンスの上にあるもの。
お骨!!
白い箱がみえた。
でも、本当は何か袋に入っていた。
正確には、私の頭の中で見えていた。
でも、それだけでなかった。
となりの部屋には、違う仏壇がみえた。
これは、現実に見えていた。
こちらの仏壇にいらっしゃる方からの視線ではない。
一人の方の視線だから。
私に熱い視線を送っていたのは、タンスの上の方。
ご尊体様の奥様。
で、となりの部屋の仏壇は…奥様のご先祖様。
思い返せば、玄関入ってスッキリしない違和感があった。
納棺、無事に終わって先輩に気づいたことを話す。
お骨は、出来る事ならお寺に預けるのがいい。
お仏壇も一つがいい。
それぞれの居場所は必要だと思う。
お仏壇が二つではなくて、その家に来たのだから、その家の仏壇に一つにするのがいい。
と、私は思う。
その家では、そう感じたからだ。
なぜなら、二つあるということは受け入れてもらえていない。
その家の家族になり切れていないような。
そんな、感じがした。
先輩、鈍いのかと思っていたけど私と同じ違和感を感じていたようで、家族に色々説明をしていた。
(良かった。)と思った。
先輩の話を、大勢の方が聞いていたから。
どういうことかというと、責任をその場にいる家族の方たちで分けているように感じたからだ。
私や先輩の思いをしっかり橋渡しできた。
そして、
先輩の車に乗り、帰宅。
どうやって帰ったのか?
思い出せない。
記憶にあるのは、翌日点滴して復活したこと。


コメント