人肌でお願いします

納棺師(おくりびと)

私が、納棺師(おくりびと)をしていた頃のこと。

仕事の前後は、よくコンビニへ寄った。

トイレを貸してもらうこともあれば、

腹ごしらえのこともあった。

尊体メイクと言っても、

顔を整顔と言って、整えることがある。

依頼先より、「今日の方は損傷が酷いから、よろしくね。」と。

色々な方がいらっしゃるので、どんな様子でお亡くなりになったのか?

教えてもらえる時は聞くんだけどね。

そうでない時は、わからないからまずはご飯。

腹が減ってはいくさはできぬ。

いくさではないけど、

長丁場になることもあるし、何しろ尋常じゃない集中力がいることも。

もうね、膨らんだ風船を一枚場のカミソリで表面を撫でるところ。

想像してみて。

失敗したら、破裂するでしょう。

そんな仕事の時もあるのよね。

で、

家族は見てる。

自分が自分に、如何に集中できるかが運命の分かれ道になる。

奇跡的に、それでの失敗は一度もない。

私は、守ってもらえてるといつも思う。

ありがとう。

今日は、仕事が終わり、お腹も空いてコンビニへ寄った。

夕方のコンビニは、混んでいる。

学生からお年寄りまで、色々な方が買い物をしている。

特に、よく見るのは道路工事とか大工さんとか。

体張って仕事をしている人たち。

身体も大きく、筋肉もすごい。

私は、順番に待ちの列に並んでいると埋もれて見えなくなってしまう。

そろそろ、私のレジの番。

目の前には、身体の大きな首にタオルをかけている男性。

きっと、身体を張ってお仕事した帰りなんだろうね。

仲間らしき人が数人いた。

目の前にいた男性がレジの番になった。

対応しているのは、高校生らしい、可愛い女の子。

アイドルのような顔立ち。

可愛いなと思い、みていた。

「いらっしゃいませー。」

声も笑顔も可愛い。

目の前の男性は、無骨な手から小さいおにぎりを一つ、差し出す。

「温め、どうしますか?」と聞いている。

「おう。熱いのは嫌なんだよな。」

「姉ちゃん、人肌にあっためてくれ。」

と。

女の子、困った様子。

きょろきょろして、考えてる。

そうしたらね、

おにぎりを胸元に入れて、ぎゅうと抱きしめた!!

「えっ?」

と、男性の驚いた声が聞こえた。

店員の女の子は、満面の笑みでいう。

「人肌に、温めました。」

なんか違うけどね。

男性は、まんざらでもないし。

「ありがとな。」

と、おにぎりを受け取ってお店を出ていった。

この様子。

私だけではない。

隣のレジに並んでいたサラリーマン風の男性。

(いいなあー。)

と心の声が聞こえていそうだった。

私もおにぎりを買った。

「あたためますか?」

と聞かれたけど、

「大丈夫だよ。」

とそのまま受け取った。

あの、人肌に温めてもらったおにぎり。

あの人、食べたかな?

あの、女の子めっちゃ可愛かった。

私は、ファンになりました。

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