今から、30年位前になるかな?
よく、お土産屋さんで売っているちょうちん。
地名が書いてる。
あれがね、沢山飾ってあるお店があったの。
そこはね。
料理屋さんの離れ。
とある、和食のお店。
当時勤めていた職場でのこと。
新しいプロジェクトが立ち上がり、私は、マニュアル作成を担当していた。
でね。
打ち合わせというか、親睦会みたいな感じで飲み会があったの。
私は、先輩を車に乗せて親睦会の場所へ。
その日、本店の中はとても混んでいてね。
離れしかあいていなかった。
予約。
とってあったのかは…忘れてしまった。
コタツだったから。
冬だったのだと思う。
鍋を食べたような気がする。
私たちは、薄暗い部屋に通された。
でもね。
目が慣れてくれば、見えるしね。
そのうち、部屋の電気がね、ついたり消えたり。
(これは、おかしい…)
(さっきから、変な気配がするし…)
そのうち。
壁にというか、和室の鴨居にかかってた提灯が、ポコンと飛び出し、落ちた。
(なんかいる…)
私は、提灯とは反対側の壁に寄り添い、目を凝らしていた。
見えた!
まっくろくろすけの…もっとでっかいやつ。
どのくらいかな?
30センチくらいはあった。
そう!
黒い煙のかたまりみたいなのがいた。
そいつが、めちゃめちゃ素早い動きでいたずらしているのだ。
そのうち、部屋の電気は消えて、真っ暗になった。
鍋の火も消えていた。
私は、いい加減にしろ!と、心の中で怒っていたが、いたずらは止まらない。
あれはなんだったんだろう?
私の様子が変なことに気が付いた先輩に事情を説明したら、泣き出してしてしまったのだ。
でも、そいつがずっとやってるんだよね。
先輩泣いちゃうから、私は、同僚たちを置いてお店をでた。
先輩を家に届けてから、家に帰った。
あいつ。
私の後をついてくるわけでもないから。
地縛霊なのかな?
座敷わらし…とは、ちょっと違う。
妖怪の類なのかな?
私は、はじめてのことだったから、わからない。
怖いというよりも、私自身怒ってたし。
そう。
私のすぐ近くまで転がってくるから。
捕まえようとするんだけど逃げるんだよね。
からかわれている感じ。
今思うと、遊んでた?
私は、やっぱりからかわれたんだと思う。
でね。
去年。
その料理屋さんの離れがあった場所を車で通ることがあった。
更地になっていた。
料理屋さんもなかった。
まっくろくろすけ。
あいつ。
大人ではないと思う。
とにかく。
八畳の部屋を、自由に動き回っていた。
提灯が、いくつも床に散乱した。
あれは…
あいつの正体。
私にも、わからない。
でも、最初で最後の出会いだった。
だって、あんなの見たことないもの。


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